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遺言書を作成したほうが良い人とは?

遺言書を作成しておいた方が良い人はどんな人?

遺言の普及状況

まず前提として、日本での遺言の普及率(遺言書を書いている人)は諸外国に比し非常に低いといわれています。
その理由としては、主にあげられるのが、1.うちは子供同士仲が良いから大丈夫 2.今現在、自分はまだまだ元気だから遺言書を書く必要性を感じない 3.財産が少ないから遺言書を書くまでもない等があります。
また、子供は、親に遺言書を書いてもらいたいと思っていても、なんとなく縁起が悪いような気がして言い出せなかったり、仮に遺言書を書いてほしいと伝えたところで、「自分はまだ元気なのに、早く死ねというのか。」等言われることもあるようです。
しかし、遺言書を書いたからといって、縁起が悪いわけでもありませんし、子供が親に早く死んでほしいなどと思っているわけでも当然ありません。相続人の立場である子供たちからしてみれば、大切な人が残してくれた土地や建物、預貯金等の遺産について円満・円滑に承継し、子供から孫、ひ孫へと確実に承継していきたいと思っているのが大半ではないでしょうか?
欧米では、日本とは逆に遺言書を書いてないほうが珍しいといわれています。それぞれの国のお国柄等があるとは思いますが、日本人も「遺言書を書く」ということにもう少し前向きになっても良いかと思います。
参考までに、近年の遺言書の普及状況を下記にてご覧ください。(※スマートフォン等を利用してご覧の場合、表がうまく表示されないことがあります。その場合は、横画面にしてご覧ください。)

公正証書遺言の作成件数

※スマートフォン等をご利用の方、表がうまく表示されないことがあります。画面を横にしてご覧ください。

暦年 公正証書遺言作成件数
平成21年 77,878件
平成22年 81,984件
平成23年 78,754件
平成24年 88,156件
平成25年 96,020件
平成26年 104,490件
平成27年 110,778件
平成28年 105,350件
平成29年 110,191件
平成30年 110,471件

自筆証書遺言の作成件数

暦年 自筆証書遺言作成件数(家庭裁判所にて検認手続きの申出があった数)
平成19年 13,309件
平成20年 13,632件
平成21年 13,963件
平成22年 14,996件
平成23年 15,113件
平成24年 16,014件
平成25年 16,708件
平成26年 16,813件
平成27年 16,888件
平成28年 17,205件

公正証書遺言の作成件数は約10万件から11万件でほぼ横ばいで推移しています。
自筆証書遺言の作成件数については、発見されていないもの、隠匿されたもの、破棄されたもの等の事情もあり正確な数字ではありませんが、若干増加傾向にあるようです。
この辺りも、日本人の遺言に対する意識が変化している表れかと思います。
しかし、日本の年間死者数は130万人強ですので、やはり、日本においては遺言書の普及率は1割程度と諸外国に比べ格段に少ないのが現状です。(アメリカでは50%程が遺言書を作成しているといわれています。)

遺言を作成したほうが良い人とは?

※スマートフォン等をご利用の方、表がうまく表示されないことがあります。画面を横にしてご覧い。
では、本題に入り、遺言を作成した方が良い人はどのような人かを見ていきたいと思います。下記にまとめてありますので、お心当たりのある人はぜひ遺言書の作成をご検討下さい。

夫婦の間に子供がいない お子さんがいないご夫婦の場合、他方配偶者がお亡くなりになると、生存配偶者とお亡くなりになられた方の親又は兄弟姉妹が相続人となります。残された配偶者と自分の親又は兄弟姉妹が相続について争ってほしくない方、確実に残された配偶者の居住の確保や生活資金の確保をしたい方は遺言を作成することをお勧めします。
先妻の子と後妻の子がいる 先妻の子と後妻の子がおられる方は、生存配偶者とともに両方の子が平等に相続分を取得します。先妻の子と被相続人が長い間、その関係が疎遠であった等の事情がある場合、相続について争いが生じる可能性があります。遺言を残すことによって、自身の意思を明確にすることが大切です。
認知した子がいる 被相続人が生前、婚姻関係にない方との間にできた子を認知した場合、その子にも第1順位の相続人としての地位が与えられます。この場合もやはり、上記の理由により遺言を作成することをお勧めします。
内縁の妻に財産を残したい 法律婚をしていない内縁の妻には相続分は認められておりません。よって、内縁の妻に遺産を残したい場合は必ず遺言を作成しなければなりません。
財産を与えたくない相続人がいる 長年関係が疎遠となっている等の理由により、財産を与えたくない相続人がいる場合、遺言を作成することによりその意思を明確にしましょう。遺産を渡したくない相続人が兄弟姉妹であれば、兄弟姉妹は「遺留分」を有しないので遺言を書くことによって、一切の遺産を渡す必要がなくなります。
行方不明の相続人がいる 相続において相続人の中に行方不明者がいる場合、遺産分割手続等に大きな支障がでてきます。この場合、行方不明者の為「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申立てる必要が生じる等、通常の相続手続きに比し煩雑な手続きを要することとなります。相続人の中に行方不明者がいる場合には、遺言によって意思を明確にしておいた方が良いでしょう。
相続人の貢献度を考慮したい 特定の相続人の自身への貢献度を評価してあげたい人は遺言書を書くことをお勧めします。法定相続人間で、遺産分割協議が行われ、その際に、当該相続人の貢献度を他の相続人が酌んでくれるとは限りません。自分を最後まで看病してくれた相続人、最後まで同居してくれた相続人に対し、多く遺産をあげたいと思われる方も多いかと思いますが、確実にその思いが届くように是非遺言書の作成をご検討下さい。
会社を継ぐ相続人に会社財産を確実に承継させたい 中小企業、個人事業等の経営者の方の事業承継を円滑に行うためには遺言書は欠かせないツールになってくるでしょう。理念の承継、経営基盤の承継、経営の承継、資金繰り等の急務にとらわれすぎて後回しになりがちですが、円滑な事業承継においては「資産の承継」も確実なものにする必要があります。資産の承継がうまくいかず、相続人間で株式の分散が生じたり、社用地である不動産の共有化が生じたりすると後継者の会社経営に大きな支障がでる可能性もあります。後継者に確実に会社財産を承継させるためにも遺言書を書いておきましょう。
生前お世話になった人に遺産を分けたい 生前お世話になった人に遺産を分けてあげたいとお考えの方は、その思いを実現するため遺言書を作成しましょう。また、あなたの思いを確実に実現する為に、併せて「遺言執行者」を選任しておくのも良いでしょう。
財産を寄付したい 自治体、病院等に財産を寄付したいと思っている方は遺言書を作成して下さい。また、あなたの思いを確実に実現する為に、併せて「遺言執行者」を選任しておくのも良いでしょう。
最近自身の判断能力に衰えを感じ始めている 遺言の作成を既にお考えの方で、最近ご自身の判断能力の衰えを感じ始めていらっしゃる方はお早めに遺言書を作成することをお勧めします。特に、自筆証書遺言での遺言を作成する場合、遺言作成当時の判断能力の有無(遺言能力の有無)について争いが生じることがあります。また、判断能力が不十分な状態となり、成年後見制度の利用が開始された後においては、有効な遺言を書くことが不可能若しくは非常に困難となります。

まとめ

遺言を作成した方が良い方について見てきましたが、どれか一つでもお心当たりのある方は、ぜひ一度遺言書の作成をご検討下さい。
先に述べたとおり、日本における遺言書の作成率は諸外国に比し非常に低い値となっております。その理由についても、多くの人が先に書いた理由により遺言書の作成に踏み切れない又は関心がないのではないでしょうか?
「子供同士が仲が良いから大丈夫。」とお考えの方、果たしてあなたがお亡くなりになった後もそうでしょうか?相続における親族間の争いは往々にして、相続とは無関係な第三者の介入によって起こるものです。
あなたの生前中は子供同士が仲が良いからといって、いざ遺産の配分を目の当たりにした状況で争いにならない保証はあるでしょうか?相続とは無関係であるべきはずの、それぞれの子供の配偶者等が遺産分割に介入してくることはないでしょうか?
「今現在、自分はまだまだ元気だから、遺言書を書く必要性を感じない。」とお考えの方、むしろ、有効な遺言書は、あなた自身が元気なうち書かなければなりません。認知症等により判断能力が欠如した状態となった後では、原則として有効な遺言書を書くことはできなくなります。また、突然の事故、病気等に遭遇する可能性だってゼロではありません。
「財産が少ないから遺言書を書くまでもない。」とお考えの方、私自身、これまで多くの相続に関する相談を受けてきましたが、ご相談にこられた方は必ずしも資産家等の財産が多くあるような方ばかりではありません。むしろ、一般的なご家庭での相続相談のほうが多いのです。例えば、遺産にご自宅の土地建物が含まれるような場合、「長男が自宅の土地建物を相続するのが当然だ。」「自宅を相続した者は取り分が多くなるから不公平だ。」「親の面倒を一番見てきたのは自分だから自分が遺産全てを相続するべきだ。」といったように、資産家のような家庭でなくとも、又、財産の多い少ないに関わらず相続に関するトラブルは生じ得るものです。
公正証書遺言にせよ、自筆証書遺言にせよちゃんとした遺言を残そうと思えば、多かれ少なかれ費用は発生しますが、遺言を残さなかった結果、相続人間で遺産分割協議が整わないなどにより調停手続、審判、訴訟手続に発展した場合にはもっと多くの費用の支出が見込まれますし、かといって、相続問題を長年放置していると、また次の世代へツケを回すことになり、最終的には問題解決に至る道筋すら見出すことが困難となります。
この度、相続法の大改正が行われ、「自筆証書遺言の方式緩和」や「自筆証書遺言の保管制度」が新設されたのも、遺言書の作成を促すといった背景が見受けられます。
ご自身亡き後、大切な人同士が争うようなことにならないよう、良い遺言をすることをお勧めします。

遺言をお考えの方こちらの記事も併せてご覧下さい。

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